泥のように眠れ

 

昨夜夢を見た

 

夢の中の「俺」は記憶を失っていた

そして、何かを探し続けていた

 

赤地の絨毯には黄金色が施され

ホールのように階段状に

座席が並んでいた

 

そこに座る人々は馴染みのある人ばかり

楽しそうに何かを待つ人もいれば

悲しそうに涙を浮かべる人もいた

 

涙を流す女性に寄り添い

理由を聞きながら必死に宥める

 

ただ、その邪魔をするように

知らない女2人がチラチラとこちらを見ている

何度も席を移動するのだが

その度に彼女たちは邪魔をする

 

ついに「俺」は怒鳴ってしまった

涙を流す女性の事が、とても大事らしい

 

まだ泣き止まない彼女が

僕の目を見て言う

「そんな人じゃない。すぐに怒ったり、怒鳴ったり怖い姿を見せるような人じゃない。」

「だからお願い、笑って?」

「私は全部知ってるから、君のこと。」

 

「ごめんね」

そう口にした時、自分が泣いている事に気付き、驚いた

彼女が優しく抱きしめてくれた

心が軽くなるようだった

ただ、まだ女2人はウロウロとしている

 

周りにいる、エキストラのような

「知らない人々」の視線が気になる

それでも、「俺」は彼女から離れなかった

 

 

目が覚めて、まだもう少し

夢の続きを見たいと駄々をこねた

枕に顔を埋めて、もう一度眠ろうとした

でも、それは無駄で

また誰かを失ったように思えた

 

彼女はもう泣き止んだのだろうか

何かとはなんだったのか

「俺」は誰だったのか

 

1日経ってもまだそんなことを考えてしまう

 

こんなに寂しい思いをするなら

泥のように眠ってしまえばよかった

 

静かに深く深く

夢など見る余裕もないくらいに

泥のように眠ってしまえばよかった